客論

相撲でまちを元気に

子供の頃は「お相撲さんになりたい」と思っていた。

体格が小さかったため、行司か呼び出しでもいい…と思うくらい相撲が大好きだった。

ある時、朝稽古見学付きの本場所観戦ツアーに参加した。稽古を見学した部屋は「東関部屋」。

当時は横綱曙が土俵に君臨していた。そんな横綱に、全身砂まみれになってぶつかる若い力士がいた。稽古が終わり、偶然近くにいたその力士と写真を撮った。三段目の「潮丸」という力士だった。

数日後、我が家に電話が掛かって来た。「潮丸です。写真ありがとうございました。」初めてお相撲さんと口をきいた私は有頂天になり、彼を応援するようになった。彼はみるみる番付を上げ、ついに幕内力士に昇進した。東京に行くたびに朝稽古を見学し、昇進のお祝いを贈るなど交流が続いた。

6年前に延岡で巡業があり、潮丸も現役の関取として参加していた。食事の席で彼から「師匠の定年に伴い、自分が東関部屋を継承することになった」と聞かされた。私はひらめいた。「部屋の力士を連れて延岡で合宿をしてよ!」と申し出たところ、「いいよ」と応じてくれた。後に聞いたところ、「半分冗談だと思っていた」とのことだったが…。

さっそく合宿実行委員会を立ち上げ、宿舎の確保、土俵の整備、資金の調達に奔走した。延岡市民の皆さんが本当に協力的で、とんとん拍子に合宿の準備が整った。

平成21年の九州場所終了後、東関部屋の力士一行が延岡入りした。稽古場には、早朝から大勢の市民が詰めかけた。地元の女性部とともに作った東関部屋特製ちゃんこ鍋の振る舞いには長蛇の列。最後には足りなくなり、力士用のちゃんこも振る舞いに供出する始末。でも力士たちも笑顔だった。

稽古終了後には、保育園や高齢者施設への慰問活動も行った。どこに行っても力士達は大人気。お年寄りの中には力士に向かって手を合わせたり、「生まれて初めてお相撲さんを見た」と言って涙を流す姿も見られた。わざわざ痛い足を引きずって稽古場に来られ、「ここをさすってほしい」と訴える方もおられた。

夜は繁華街に繰り出してもらい、街の経済活性化にも一役買ってもらった。ちょんまげ姿の力士達が街を闊歩するとたちまち人が寄って来た。お店の人も、「お相撲さんが来ると縁起がいい」と喜んでくれた。

なぜお医者さんがお相撲さんを呼んでいるのか? もちろん私が相撲好きだからなのだが、最終的に医師が目指すのは「そのまちに暮らす人が元気になること」である。であれば、薬を出して元気になろうが、お相撲さんと触れ合って元気になろうが、目的は同じである。しかも副作用がない!

折しも今延岡では、琴恵光関の十両昇進で相撲への関心が高まっている。子供からお年寄りまでが楽しめるのは、やっぱり相撲をおいて他にはない。

今年の東関部屋合宿は11月30日から12月10日まで西階運動公園にて。ちゃんこ鍋の振る舞いや餅つき、ちびっこ体験入門など楽しい企画をたくさん用意している。ぜひ足を運んでいただきたい。

私の究極の夢は…いつか横綱審議委員になって、宮崎県出身力士を横綱に昇進させることかな?