客論

医師不足対策は「愛」だ

地域の医師不足問題が深刻である。

延岡市でも、医師の絶対数不足に加え、診療科の偏在や開業医の高齢化(平均年齢は60歳を超えている)、医療機関の後継者不足に頭を悩ませている。

「医療機関新規開業促進事業」として開業奨励金を支給し(当院が認定第一号)、一定の成果は挙げているが、現状はまだまだ厳しい。

どのようにすれば地域に医師を呼び込むことができるのか?

まずは、なぜ地域から医師がいなくなるのかを考えてみる。

これは「逃げた嫁さん」として考えてみると分かりやすいと思う。

家事が大変(過重労働)、生活費が少ない(給与への不満)、自分の時間がない(長い拘束時間)などが重なると、逃げ出したい気持ちが募ってくるだろう。

しかし、決定的な決め手は「愛情」がなくなることだと思う。「愛されていない」と感じることほど寂しいことはないだろう。

業界的には「売り手市場」なので、逃げ出しても次の嫁入り先(就職先)は容易に見つけることができる。

確かに結婚生活(医療の現場)は厳しい。だがそれは百も承知で嫁入りして(医師になって)いる。そのモチベーションを維持する最も大きな力は、結婚相手(住民)から「感謝の気持ち」すなわち「愛情」を直接受け取ることである。

延岡市では、先述の開業奨励金に加え、「地域医療を守る条例」を制定したり、市民団体が熱心に活動するなど、地域医療を守る取り組みが盛んである。「お医者さんを大切にしよう」という意識、すなわち「愛情」を感じるまちである。

さて、医師を呼び込む「秘策」がある。

世は「婚活」が花盛りである。最近は自治体が主催するお見合いパーティーもあるとか。

では、医学生を対象とした「婚活事業」はできないだろうか?

「地域医療実習」として、延岡の医療機関を見学したり、地域医療の現状について実際に学ぶ。夜は地元の若い女性たち(もちろん男性も可)と交流しながら、地域医療やまちづくりについての「夜なべ談義」をしてもらう。

翌日はそのまま延岡市内を観光。シュノーケリングやボルダリング、カヌー遊びなどを一緒にすると親密度が増しそう。出逢いの聖地・愛宕山は必ず訪れたいところ。

そうやって一組でも二組でもカップルが成立すれば、将来医師になってから延岡で働いてくれる可能性が高まる。それは、宮崎市出身の私が延岡市で開業していることが何よりの証拠である。妻が延岡市出身でなければ考えてもいなかったことである。

子育てをする上においても、妻の実家が近くにあることのメリットは大きい。地方で働こうとすると、たいてい奥様の抵抗がネックになるので、そのハードルがないことは重要である。

私の印象だが、医師は子だくさんの家庭が多い(ちなみに我が家は4人)ので、少子化対策にも効果があるものと思われる。

「地域を愛する」ことはもちろん大切であるが、「愛する人の地域に住む」ことの良さをもっとアピールしていいのではないかと思う。

繰り返して言う。

医師不足対策の鍵は「愛」だ!